僕が見てきた好きなことを仕事にしている人の特徴(アニメ/映像/音楽/広告/ゲーム系で)
ちょうどこのはてなブログの他の方の記事で、
40代でも自分が好きな漫画/ラノベ業界で働きたいと投稿されていた方がいらっしゃいました。
とても熱い想いをお持ちで、読んでいて自分も研鑽をしていかねばと改めて感じます。
僕はお陰様で自分が好きなことでかろうじて飯を食えているわけですが、世の中には好きなことは仕事にしないほうがいいという意見も割りとよく聞きます。
確かに皆が皆好きなことを仕事にしていたら世の中は回らないわけなので、誰かれ構わず好きなことを仕事にしなくちゃいけないよとは言いません。
それに、もしもあなたが好きなことを仕事にしようとしたらそれ相応の代償が発生する可能性もあります。
例えばアルバイトをしながら歌手を目指し、10年が経過したとしてもプロとして十分な収入が得られない可能性も全然あります。
ただ僕は少なくとも「好きなことを仕事にしたい」と思っている人がいたならば、その人に向かって「好きなことは仕事にしないほうがいい」とはいいません。
「やりたいと思ったらやってみればいい」と伝えます。
しかしその時に必ず一つだけ、僭越ながらアドバイスを付け加えるようにもしています……
それは
「夢は持ちつつ、でも一旦それをしまっておく覚悟を持つ」
ということです。
僕らがいるようなアニメや映像や出版や音楽などのコンテンツ系の業界は
"忙しいといわれているけど、そこそこ華やかさがあって好きな作品やクリエーターに囲まれた夢のある業界"
という印象があるから入ってみたいという10代20代の方々が、ありがたいことにたくさんいらっしゃいます。確かにその印象は間違っていなく、華々しい瞬間や楽しい瞬間、夢のある瞬間がたくさんあります。
しかしそれらは、その数十倍、数百倍の辛くて面倒くさくて大変なことの積み重ねの上にあるものということもまた事実です。
そんなことはわかってらい!
それを承知の上で希望してるんじゃ!
と、思われるかと思います。
しかし、例えば僕が"製作会社"(TV局/配給会社/代理店/メーカーなどと呼ばれる会社)ではなく"制作会社"(実際にTV番組や映画やアニメやCMの映像を制作している会社)にいた頃は2年間で50人くらいの新人が入っては辞めていくというのを目の当たりにし、結局2年間続いた人は片手で数える程でした。
その2年間を残った数名の特徴は、
「それぞれ明確な夢は持ちつつも、仕事は仕事、辛くて面倒で大変なことであると割り切って、自分が夢見たこと以外の現実も受け入れて日々の業務に取り組めた人」
であるという点です。
映像コンテンツを作る時もゲームを作るときも、手放しで楽しいと思えるのは一番最初の企画会議くらいで、製作が進むに連れて困難なことばかりにぶち当たります。
本当に仕事の90%、いや、99%は辛くて面倒くさくて大変なことばかりです。
しかしその99%を超えないと本当に楽しく、夢見ていたことである1%に出会えません。夢だけを抱いていると、夢と乖離した現実の99%に心砕かれ、結局夢であった1%に達することができなくなってしまいます。
また、自分の夢への思いが暴走し自制心を失い、99%をないがしろにしてしまう人は、やはり周囲からの信頼が得られず、1%を味わうチャンスも与えてもらえません。
もちろん自制心に重点を置くばかりで本来の目標であった夢が忘却されてしまうとそれはそれで成長欲求といいますか、ハングリー精神といいますか、そういうものが薄れ、なによりも好きを仕事にするはずだったのに、好きで無くなってしまっていたなんてことも……(汗
これが好きを仕事にしてはいけないと言われる理由の一つであるのではないかと思います。
そう考えると何事もバランス感覚ですね…
(とりあえずバランス感覚という言葉を言っておけばなんとかなる感があってアレですが)
もちろんこの辛くて面倒くさくて大変な99%のことは、自分の努力やら立ち振舞や運次第で減らしていくことができます。
僕はまだまだ下っ端みたいなものなので辛くて面倒くさくて大変なことのパーセンテージが限りなく99%に近いのですが、パーセンテージを減らしていっている人もたくさん見てきています。
その方法はたくさんありますが、一番単純な方法としては、偉くなり、辛くて面倒で大変な部分をどんどん部下や他社に分散していくという方法が挙げられます。(イヤな言い方ですがw)
それでもなお、偉くなればなったで新しい苦労が増えるのは当然ですのであくまでも単純に言えば、というだけではあります……
さてさて、ここまでだらだらと書いてきたことはですね、
ご安心ください! と、いったら良いのでしょうか?
僕が書いてきたことはあくまでも僕が見聞きした会社などで、"組織の人間"として好きなことを仕事にするならこんな心持ちがお勧めでっせというだけです。
所詮僕が知る範囲の組織の中で自分の夢を掴んでいく人の特徴というだけです。
逆に言えば組織の人間ではない、個人のクリエーターや、ベンチャー企業の立ち上げを目指す人ならば、自分の夢にだけ正直に貪欲に、やりたいことはやらないという姿勢も非常に重要であると考えていますし、所属する組織や上司の気質、そして運次第では自分の夢にのみ忠実にいたとしても好きを仕事にできる可能性すらあると思っています。
ただ、よっぽどイケイケで経営資源に余裕のあるような企業とかではない限り、
会社という組織に属しつつ自分の夢に近づくには、夢と乖離した現実を受け入れ、粛々と仕事をこなしつつ、虎視眈々と夢を追いかけていく姿勢が大事なのではないかと思います。